複数のディスクを組み合わせて信頼性や速度を高めるストレージ技術が RAID(Redundant Array of Independent Disks)です。
RAID の定義
RAID とは、複数の物理ディスクをひとまとめにし、OS やアプリケーションからは1台のストレージとして見せる技術です。目的はおもに2つ——データを分散して読み書きを速くすること(パフォーマンス向上)と、複数のディスクにデータを冗長に持たせてディスク障害時のデータ消失を防ぐこと(耐障害性向上)です。どちらを優先するかによって使う構成(RAID レベル)が変わります。
名称は1988年にカリフォルニア大学バークレー校の論文で提唱されました。当初は「Inexpensive(安価な)」Disks の頭字語でしたが、現在は「Independent(独立した)」と解釈されることも多いです。
RAID レベルの概要と比較
代表的な RAID レベルを整理します。
| レベル | 仕組み | 最低ディスク数 | 読み書き速度 | 耐障害性 |
|---|---|---|---|---|
| RAID 0 | ストライピング(データを分割して並列書き込み) | 2 | 高速 | なし(1台でも壊れると全損) |
| RAID 1 | ミラーリング(同じデータを2台に書き込む) | 2 | 読み取りは高速、書き込みは等速 | 高(片方が壊れても継続) |
| RAID 5 | ストライピング+パリティ分散 | 3 | 読み取りは高速 | 中(1台障害まで耐える) |
| RAID 6 | ストライピング+パリティ2重分散 | 4 | RAID 5 より書き込みが遅い | 高(2台同時障害まで耐える) |
| RAID 10 | RAID 1 のミラーペアを RAID 0 でまとめる | 4 | 高速 | 高(ペア内の片方ずつ同時故障まで耐える) |
RAID 0 は耐障害性がまったくないため、一時キャッシュや動画編集の作業領域など「速度優先・データ消失が許容できる用途」に限られます。本番データの保管には向きません。
ハードウェア RAID とソフトウェア RAID
RAID の実装には2種類あります。
ハードウェア RAID は専用のコントローラーカードや NAS・サーバーの RAID チップが処理を担います。CPU 負荷が低く、OS の種類を問わず動作する点が強みです。コントローラー自体が壊れると交換に同一機種が必要になる場合があり、移行コストに注意が必要です。
ソフトウェア RAID は OS が処理を行います。Linux の mdadm、Windows のダイナミックディスク、macOS の Disk Utility などが代表例です。専用ハードウェアが不要なぶんコストを抑えられますが、CPU 資源を消費します。小規模サーバーや学習目的のラボ環境であれば十分に機能します。
RAID を使う場面と注意点
RAID はディスク単体の故障に対してデータを守れますが、バックアップの代替ではありません。RAID 1 や RAID 5 でミラーを持っていても、誤操作によるファイル削除・ランサムウェアによる暗号化・コントローラー故障・複数台同時障害などには対応できません。
RAID はあくまで「ディスク障害による停止リスク」を下げる仕組みです。データの長期保護にはスナップショットや別拠点バックアップを組み合わせる必要があります。
たとえばファイルサーバーを RAID 5 で構成している場合、再構築(リビルド)中に別のディスクが壊れると全データが失われます。ディスク台数が増えるほど各ディスクの使用時間も増え、リビルド中の二重障害リスクは現実的な問題です。RAID 6 や RAID 10 への移行、あるいは定期的なスナップショット取得が現場では標準的な対策になっています。
RAID の次に押さえたい概念
RAID の上位レイヤーとして、ZFS のような高度なファイルシステムが注目されています。ZFS は RAIDZ(RAID 5 相当)や RAIDZ2(RAID 6 相当)を組み込みで持ちつつ、チェックサムによるデータ整合性検証やスナップショット機能も提供します。従来のハードウェア RAID に依存せず、ソフトウェアだけでより高い信頼性を実現したい場合の選択肢として知っておくと次のステップに進みやすいです。